振り出しにたどり着いた年

痛み止めを入れていたポーチに、あめ玉を入れて歩く術後8ヶ月半。
発表会に代わる「バレエ・パフォーマンス」本番まであと10日。

関節のひどい痛みから解放されただけでも夢のようだったのに、
いまなお、できることが徐々に増え続けている。しゃがむことも
できるようになった。折に触れ、右足を使っている実感がある。

実のところ、左足も要手術の宣告は受けているので、今後徐々に
痛みがひどくなっていくのかもしれないが、この半年の間に自覚
症状レベルでは、改善してきているようにも感じる。

手術前は、手術をしてしまうともう終わりかもという諦念があった。
人工関節の寿命問題。脱臼の危険。手術によって人工関節であるが
ための禁忌に直面し、一生できなくなる動きがある。
一歩一歩のひどい痛みから解放される。それだけが手術のメリット
だと、藁にもすがる思いで決断した。

前屈等無理な動きをすれば脱臼の恐れはあるが、付根の伸展、開脚、
背筋……可動域を少しでも元に戻したい。だんだん欲が出てくる。
そうして基本に帰着する。

いまだから言葉にできるが、昨年の今頃は、毎回のレッスンが苦痛で
仕方がなかった。実際に一歩一歩が痛むので通うだけでも一苦労だが、
精神的にも苦痛は大きかった。やればやるほど下手になっていく。
とことん下手になって、踊ることは一生無理になるだろう。
「もう、これで最後にしよう」と思いながら、レッスン場で
よろよろと1時間半を耐えていた。「いま辞めたら一生踊れなく
なるのだ」という絶望感だけが、逃避を引き留めていた。

あらためて、基本から見直したいと思ういま。
手術はむしろスタート地点へのワープだった。