手術をした日

麻酔から覚めて時刻を尋ねると、11時半頃とのこと。
準備の時間を除けば、手術に要した時間は2時間ほどか。
杖をついてよろよろと歩いた長い道のりを、いまは
ストレッチャーに載せられたままゴロゴロと運ばれている。 
酸素マスクや、点滴や、尿道カテーテルに繋がれて身動き
しづらいであろう長い一両日が、これから始まる。

ストレッチャーから病室のベッドに移された瞬間を、
どういうわけか覚えていない。
ただ、病室に家族がいて、再び時刻を尋ねたのは
覚えている。12時過ぎだとか言っていた。
声が少しかすれているというので、ソプラノの発声を
やってみた。
「ア~アアアアアアア~(ドーレミファソラシドー)」
大丈夫。とりあえず下から2オクターブは出ている。
世間はウイルス禍が深刻になり始めた頃。
マスクをつけるのにも慣れてきていた。酸素マスクを
さほど煩わしく感じなかったのは、そのおかげかも。