2020-01-13 抜かされて その他 ホールの建物はもうそこに見えているのに。汗ばみながら、傾いてぐらぐらと揺れながら、歯を食いしばって進むその一歩はあまりにも小幅。同じところへ向かう人々が、どんどん自分を追い抜いていく。軽やかな足取りで、楽しそうにおしゃべりなどしながら追い抜いていく。抜かされる者は、「ふう、ふぅ」と激しく息を乱し、思わず「痛っ、痛たたた」「いっ、痛たた」とうめき、ときどき顔を上げて、目的地をにらむ。 何もかも、このように抜かされていくのだ。