抜かされて

ホールの建物はもうそこに見えているのに。
汗ばみながら、傾いてぐらぐらと揺れながら、
歯を食いしばって進むその一歩はあまりにも小幅。
同じところへ向かう人々が、
どんどん自分を追い抜いていく。
軽やかな足取りで、楽しそうに
おしゃべりなどしながら追い抜いていく。
抜かされる者は、
「ふう、ふぅ」と激しく息を乱し、思わず
「痛っ、痛たたた」「いっ、痛たた」とうめき、
ときどき顔を上げて、目的地をにらむ。

何もかも、このように抜かされていくのだ。